プロジェクトの中でリーダーやマネージャーとして活躍したいと考えている方は、プロジェクトマネージャ試験の合格に向けて勉強を始めてみてはいかがでしょうか。
マネジメント領域は、役職や立場がなければ実務経験を積むのが難しい分野です。だからこそ、まずは知識を身につけ、資格で実力を証明し、実務経験を得るための土台を築くことが大切です。
本記事では、プロジェクトマネージャ試験の概要から具体的な試験内容、難易度や合格率、学習のメリット・デメリット、さらに効果的な勉強方法まで、幅広く解説していきます。
目次
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1.プロジェクトマネージャ試験の概要
はじめにプロジェクトマネージャ試験の合格を目指す上で、まずは試験そのものへの理解を深めることが不可欠です。試験の基本的な位置づけから、キャリアとの関連性、一部でささやかれる「意味ない」という意見の背景までを解説します。
プロジェクトマネージャ試験とは
プロジェクトマネージャ試験は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催する国家資格「情報処理技術者試験」の中でも、最高難易度とされるスキルレベル4に位置づけられた高度情報処理技術者試験の一つです。
この試験は、プロジェクト全体の意思決定を担い、品質・コスト・納期に責任を持つプロジェクトマネージャとしての能力を認定することを目的としています。合格することで、プロジェクトマネジメントに関する体系的な知識とスキルを有していることが、国によって客観的に証明されます。
プロジェクトメンバーとしての経験を積み、将来的にリーダーやマネージャーとしての役割を目指す方にとって、有効なステップとなる資格です。
プロジェクトマネージャ試験に実務経験は必要か
プロジェクトマネージャ試験を受験するにあたっては、実務経験の有無や年数を証明する必要はなく、年齢・国籍・学歴を問わず、誰でも受験できます。
ただし、午後の試験で課される記述式や論述式の問題では、プロジェクトマネジメントに関する具体的な状況を想定し、自分の考えを論理的に述べる力が求められます。実務経験がある方は、日常業務で得た知識や視点を活かしやすいため、論述の具体性や説得力の面で有利になる可能性があります。
しかし、実務経験がない場合でも合格している方もいらっしゃるため、参考書や過去問を通じて現場に近い事例を学び、自分なりの理解をもとに論述力を養っていくことで、十分に合格を目指せます。
プロジェクトマネージャ試験と相性の良いキャリア
次にプロジェクトマネージャ試験と相性の良い代表的なキャリアをいくつかご紹介します。
プロジェクトマネージャ(PM)
プロジェクトリーダー(PL)
ITコンサルタント
ITアーキテクト
情報システム部門の管理職
上記の職種に共通しているのは、プロジェクト全体を俯瞰しながら、品質・コスト・納期などを調整し、関係者を取りまとめていく高度なマネジメント力が求められる点です。そのため、プロジェクトマネージャ試験は、これらのポジションに就いている方や、これから目指す方にとって、非常に相性の良い資格と言えるでしょう。
また、資格を取得することで、現職でのキャリアアップはもちろん、より大規模で重要なプロジェクトへの参画や、好条件での転職につながる可能性も高まります。加えて、これまでの経験や他の技術系資格と組み合わせて活用することで、新たな分野での実務経験を積みやすい環境に身を置くこともできるようになります。
プロジェクトマネージャ試験が意味ないと言われるのはなぜか
プロジェクトマネージャ試験が「意味ない」と言われる背景には、いくつかの事情があります。資格がなくてもプロジェクトを任されることはあり、また、試験で問われる知識と現場で求められる力との間にギャップを感じる場面もあるでしょう。さらに、学習時間に対して待遇面でのリターンが不明確な場合もあり、そうした点から否定的な声が上がるのも事実です。
とはいえ、試験を通じて体系的な知識を学ぶことで、実務に対する理解が深まるのは確かです。実務経験が浅い方にとっては、マネジメント領域に挑戦する意思や準備を示す手段にもなります。現場に出てからの学びの吸収力を高める意味でも、有効な手段といえるでしょう。
特にマネジメント領域での実務経験のない方の場合、「意味ない」という言葉に惑わされて違いがちです。しかし、合格に向けて勉強し、マネジメントの知識が増えることや市場価値が高まる時点で、資格を取る価値があると考えて、自信を持って試験に臨みましょう。
2.プロジェクトマネージャ試験の詳細情報
次に、プロジェクトマネージャ試験の試験日程、出題範囲、合格率、難易度など、受験にあたって事前に確認しておきたい詳細情報を解説します。
プロジェクトマネージャ試験の試験日程や詳細
試験名 | プロジェクトマネージャ試験(PM) | |||
---|---|---|---|---|
英語名称 | Project Manager Examination | |||
試験会場 | 全国のIPA試験に対応した会場 | |||
試験形式 | PBT(Paper Based Testing)方式 | |||
試験日 | 筆記により秋期(10月)の年1回実施予定 | |||
受検料 | 7,500円 | |||
試験区分 | 午前Ⅰ | 午前Ⅱ | 午後Ⅰ | 午前Ⅱ |
試験時間 | 9:30~10:20 (50分) | 10:50~11:30 (40分) | 12:30~14:00 (90分) | 14:30~16:30 (120分) |
出題形式 | 多肢選択式(四肢択一) | 記述式 | 論述式 | |
出題数 | 出題数:30問 解答数:30問 | 出題数:25問 解答数:25問 | 出題数:3問 解答数:2問 | 出題数:2問 解答数:1問 |
採点条件 | 特になし | 午前Ⅰの基準点到達 | 午前Ⅱの基準点到達 | 午後Ⅰの基準点到達 |
合格基準 | 100点満点中60点以上 | 評価ランクAの獲得 | ||
試験結果 | 12月中旬に発表 |
参考元:https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/pm.html
プロジェクトマネージャ試験は、例年年に1回、10月の第2日曜日に実施されます。情報処理技術者試験は春期(4月)と秋期(10月)に分かれていますが、本試験は秋期のみの開催となるため、スケジュールには注意が必要です。
試験会場は全国の主要都市に設けられ、地域ごとに複数の会場が設定される場合もあります。申し込み期間や会場の詳細は、試験実施のおよそ3ヶ月前にIPAの公式サイトで発表されるため、受験を検討している方は早めに確認しておくと安心です。
試験は「午前Ⅰ」「午前Ⅱ」「午後Ⅰ」「午後Ⅱ」の4つの区分に分かれており、1日をかけて行われます。それぞれの試験形式と出題範囲を理解し、バランスの取れた学習計画を立てることが重要です。
プロジェクトマネージャ試験の出題範囲(試験内容)
午前Ⅰ:午前Ⅱ
【午前Ⅰ】
基礎理論(基礎理論、アルゴリズムとプログラミング)
コンピュータシステム(コンピュータ構成要素、システム構成要素、ソフトウェア、ハードウェア)
技術要素(ヒューマンインタフェース、情報メディア、データベース、ネットワーク、セキュリティ)
開発技術(システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術)
プロジェクトマネジメント(プロジェクトマネジメント)
サービスマネジメント(サービスマネジメント、システム監査)
システム戦略(システム戦略、システム企画)
経営戦略(経営戦略マネジメント、技術戦略マネジメント、ビジネスインダストリ)
企業と法務(企業活動、法務)
【午前Ⅱ】
セキュリティ(情報セキュリティ、情報セキュリティ管理、セキュリティ技術評価、情報セキュリティ対策、セキュリティ実装技術)
システム開発技術(システム要件定義・ソフトウェア要件定義、設計、実装・構築、総合・テスト、導入・受入れ支援、保守・廃棄)
ソフトウェア開発管理技術(開発プロセス・手法、知的財産適用管理、開発環境管理、構成管理・変更管理)
プロジェクトマネジメント(プロジェクトマネジメント、プロジェクトの統合、プロジェクトのステークホルダ、プロジェクトのスコープ、プロジェクトの資源、プロジェクトの時間、プロジェクトのコスト、プロジェクトのリスク、プロジェクトの品質、プロジェクトの調達、プロジェクトのコミュニケーション)
サービスマネジメント(サービスマネジメント、サービスマネジメントシステムの計画及び運用、パフォーマンス評価及び改善、サービスの運用、ファシリティマネジメント)
システム戦略(情報システム戦略、業務プロセス、ソリューションビジネス、システム活用促進・評価)
システム企画(システム化計画、要件定義、調達計画・実施)
参考元:https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/nl10bi0000007smr-att/youkou_ver5_4.pdf
プロジェクトマネージャ試験の午前Ⅰは、他の高度情報処理技術者試験と共通の「共通知識問題」として出題されます。テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3分野にわたる幅広いIT知識が対象となり、情報処理全体の基礎力が問われます。
午前Ⅱでは、プロジェクトマネジメントに関する専門的な知識が出題されます。プロジェクトの立ち上げから終結までに必要な各プロセスについて理解しておくことが求められ、難度の高い問題にも対応できるよう、過去問を繰り返し解いて正答率を高めておくと安心です。
なお、午前試験で基準点に満たない場合、午後試験は採点されません。知識に偏りが出ないよう、各分野をまんべんなく復習し、反復によって基礎をしっかり固めておくことが大切です
午後Ⅰ:午後Ⅱ
1プロジェクトの立ち上げ・計画に関すること |
プロジェクト、プロジェクトの目的と目標、組織の戦略と価値創出、プロジェクトマネジメント、マネジメントプロセスの修整、プロジェクトの環境、プロジェクトライフサイクル、プロジェクトの制約、個別システム化計画の作成と承認、プロジェクト憲章の作成、ステークホルダの特定、プロジェクトチームの編成、システム開発アプローチの選択、プロジェクト計画の作成、スコープの定義、要求事項と優先度、WBSの作成、活動の定義、資源の見積り、プロジェクト組織の定義、活動の順序付け、活動期間の見積り、スケジュールの作成、コストの見積り、予算の作成、リスクの特定、リスクの評価、品質の計画、調達の計画、コミュニケーションの計画、関連法規・標準など |
2プロジェクトの実行・管理に関すること |
プロジェクト作業の指揮とリーダーシップ、ステークホルダのマネジメント、プロジェクトチームの開発、リスク及び不確かさへの対応、品質保証の遂行、供給者の選定、情報の配布、プロジェクト作業の管理、変更の管理と変化への適応、スコープの管理、資源の管理、プロジェクトチームのマネジメント、スケジュールの管理、コストの管理、リスクの管理、品質管理の遂行、調達の運営管理、コミュニケーションのマネジメント、マネジメントプロセスの改善、機密・契約の管理、プロジェクトに関する内部統制など |
3プロジェクトの終結に関すること |
プロジェクトフェーズ又はプロジェクトの終結、プロジェクトの評価指標と評価手法、プロジェクトの完了基準、プロジェクトの計画と実績の差異分析、検収結果の評価、契約遵守状況評価、得た教訓の収集、プロジェクト完了報告の取りまとめなど |
参考元:https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/nl10bi0000007smr-att/youkou_ver5_4.pdf
午後Ⅰ試験は、長文の事例を読み解きながら解答する記述式の問題です。プロジェクトマネジメントの現場で起こりうる具体的なシナリオが提示され、状況を正しく判断し、簡潔かつ的確に説明する力が求められます。
午後Ⅱ試験は、本試験の中でも最難関とされる論文形式の試験です。与えられたテーマに対し、自身の経験や理解をもとに論述を行い、プロジェクトマネージャとしての実践的な課題解決力、論理的な思考力、文章構成力が総合的に評価されます。
論述式試験には「評価A」などの基準こそ存在するものの、明確な「正解」があるわけではありません。そのため、論文形式に不慣れな方は、過去問題を活用しながら、どのような解答が評価されやすいのか、設問の意図がどこにあるのかといった視点で繰り返し練習しておくことをおすすめします。
プロジェクトマネージャ試験の受験者数と合格率
プロジェクトマネージャ試験の受験者数と合格率については、令和6年度秋期の実績によると、以下のように発表されています。
受験者数:8,627名
合格者数:1,195名
合格率:13.9%
この試験は、情報処理技術者試験の中でも屈指の難易度を誇り、合格率は例年13%〜15%前後で推移している状況です。なお、受験者には、一定の実務経験や専門知識を持つ方々も含まれているため、合格率の低さから見ても、試験のハードルは決して低くありません。
とはいえ、受験に実務経験の証明をする必要がなく、未経験の方でも受験できることを踏まえると、しっかりと対策を重ねることで十分に合格を狙える試験でもあります。出題傾向を理解し、計画的に学習を進めれば、着実に合格へと近づくことができるでしょう。
プロジェクトマネージャ試験の難易度・勉強時間
プロジェクトマネージャ試験は最高難易度のスキルレベル4に分類され、合格率も低めであることから、難易度の高い試験であるのは確かです。そのため、まずは過去問題を解いて自分の理解度を把握し、現在の実力と難易度のギャップを見極めることが重要です。
勉強時間の目安についても、自分の知識や経験をもとに必要な学習時間を見積もることが大切です。一般的には200〜300時間ほどがひとつの基準とされていますが、実際の必要時間は人によって異なります。
この時間はあくまで平均値で、実務経験により学習内容と時間は大きく変動します。経験豊富な方は150時間程を目安に、ご自身の経験を論文形式へ最適化する演習が中心となるでしょう。
特に、プロジェクトマネジメントの実務経験が少ない方は、最難関である午後試験、論文で問われる「プロジェクト経験」をモデル論文から学び、疑似的に構築する演習が不可欠です。そのため半年から1年程度をかけてじっくりと対策するのが理想です。少なくとも午前試験については、合格基準点を安定して上回れるよう、知識の土台をしっかり築いておきましょう。
プロジェクトマネージャ試験の申し込み手順と試験までの流れ
ホームページにアクセスして案内書の参照
利用者ID(マイページアカウント)の作成
マイページから受験申込み
クレジットカード、ペイジー、コンビニのいずれかで支払い
受験票の受け取り
試験日に受験
約2ヶ月後に合格発表
上記がプロジェクトマネージャ試験の申し込み手順と試験までの流れです。
プロジェクトマネージャ試験は、インターネットを通じてオンラインで申し込みを行う形式が採用されています。受験会場は申し込み時点で自動的に割り当てられ、居住地などに応じて案内が提示されます。
申し込み期間はあらかじめ決められており、期日を過ぎると受験することができません。受験を希望する場合は、IPAの公式サイトで試験日程を必ず確認しておきましょう。特に、ITパスポートや基本情報技術者試験のようなCBT方式(通年受験可)に慣れている方は、申し込み時期を見落としやすいため注意が必要です。
プロジェクトマネージャ試験の有効期限や更新手続きの有無
プロジェクトマネージャ試験には有効期限が設定されておらず、一度合格すればその資格が失効することはありません。更新手続きも不要なため、一度の合格で長期的に保有できる国家資格として位置づけられています。そのため、キャリア形成に役立てるうえでも、興味を持ったタイミングで積極的に学習を始めることが大きなメリットにつながります。
ただし、プロジェクトマネジメントの世界では、手法や技術、考え方が日々進化しています。資格に有効期限がないとはいえ、現場で活躍し続けるには、常に最新の情報をキャッチアップし、知識やスキルをアップデートしていく姿勢が欠かせません。
取得後も継続的に学び、変化に柔軟に対応できるプロジェクトマネージャを目指すことが、長く価値を発揮し続けるための重要な要素になります。
3.プロジェクトマネージャ試験合格を目指して勉強するメリット
次に、プロジェクトマネージャ試験に合格することで得られるメリットについて見ていきましょう。試験勉強を通じて得られる知識やスキルはもちろん、キャリア面でのプラス要素も多くあります。
プロジェクトマネジメント能力を体系的に習得
プロジェクトマネージャ試験に向けた学習では、プロジェクトの立ち上げから計画、実行、監視、終結までの一連のマネジメント手法を体系的に学ぶことができます。断片的な知識では見落としがちな要素まで含めて、幅広い領域をカバーできるのが大きな特徴です。
合格に向けた学習によって、経験や感覚に頼って進めていたプロジェクト管理を、論理的で再現性のある形に置き換えることが可能になります。現場での判断や調整にも説得力が生まれ、チーム全体をより効率的に導く土台を築くことができます。
プロジェクトのメンバーとして業務に携わった経験がある方であれば、学んだ知識を自身の体験と結びつけることで理解がより深まり、実務への応用力も高まります。こうした積み重ねが、現場でより一層活躍できるプロジェクト人材としての成長につながるはずです。
キャリアパスの拡大と市場価値の向上
プロジェクトマネージャ試験に合格することで、プロジェクトマネジメントに関する高度な知識とスキルを持つ人材として、社内外から高く評価される立場になります。その結果、昇進や昇給、より大きな責任を伴うプロジェクトへの抜擢といったキャリアアップの機会が広がります。
さらに、転職市場においても、自身のスキルを客観的に示せる強力な証明となります。資格を通じて専門性をアピールすることで、キャリアパスの選択肢を広げることが可能になります。
加えて、IPAが実施する他の技術系資格を取得し、特定の専門領域に強みを持っておくことで、市場における価値をさらに高めることができます。マネジメント力と技術力の両輪を備えることで、より幅広いポジションへのチャレンジがしやすくなるでしょう。
資格手当・報奨金・他試験の免除制度の適用
企業や組織によっては、プロジェクトマネージャ試験の合格者に対して、資格手当や一時的な報奨金を支給する制度を設けている場合があります。学習の成果が金銭的な形で評価されることは、受験へのモチベーション維持にもつながります。
さらに、同じIPAが実施する情報処理技術者試験において、一部の試験区分では科目免除が適用されることもあります。複数の資格取得を検討している方にとって、効率的にスキルの幅を広げるチャンスになるでしょう。
また、あらかじめ自分の得意分野に関する試験から着手し、合格実績や知識を積み上げたうえで、プロジェクトマネジメント系の試験に挑戦するというアプローチも有効です。分野ごとの強みを活かしながら、段階的に学習を進めていくことが可能です。
4.プロジェクトマネージャ試験合格を目指して勉強するデメリット
次に、プロジェクトマネージャ試験に合格を目指すうえで、あらかじめ知っておきたい注意点やデメリットについても確認しておきましょう。対策を始める前に理解しておくことで、より現実的な学習計画を立てやすくなります。
合格までに多くの学習コストが必要
プロジェクトマネージャ試験の合格には、数百時間単位の学習時間を要する点がデメリットと感じられる場合があります。特に多忙な社会人にとっては、プライベートの時間を大きく削って学習時間を確保しなければならず、継続的な努力が負担になることもあるでしょう。
さらに、参考書や問題集に加えて、必要に応じて受験指導校の講座を受講する場合には、金銭的なコストもかかってきます。加えて、集中して学習に取り組むための環境づくりにも、ある程度の工夫や投資が求められる場面があります。
ただし、こうしたコストは、スキルの習得やキャリアアップといった将来的なリターンにつながるものです。目的意識を持って取り組むことで、それ自体が自己成長の大きなきっかけになるでしょう。
論述式の難易度が高い
プロジェクトマネージャ試験における最大の壁は、午後Ⅱの論文試験です。単なる知識の暗記では対応しきれず、与えられたテーマに沿って、自分の経験や理解をもとに、論理的で説得力のある文章を2時間以内に作成する力が求められます。
この論文試験は、記述力・構成力・論理展開など複数のスキルが必要とされるため、対応に苦戦する受験者が一定数見られます。特に、論文形式に慣れていない場合は、本試験で実力を発揮しにくくなることもあります。
そのため、まずは自分の経験や考えを言葉にして表現する力を、少しずつ積み上げていくことが大切です。過去問を参考にしながら、論文の構成や表現に慣れていくことで、着実に合格への手応えが得られるようになるでしょう。
実務経験が乏しいと評価を得にくい
プロジェクトマネージャ試験に合格しても、実務経験が乏しい場合は、現場での信頼や評価を得るまでに時間がかかることがあります。知識としては十分でも、実際のプロジェクトにおいて即戦力として見なされにくいことがあるためです。
特に、初めてのプロジェクトでリーダー的な役割を任される際には、経験の浅さが判断材料として意識される場面も出てきます。資格があるだけで現場を任されるとは限らないという点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
ただし、資格を通じて体系的な知識を習得していることは大きな強みです。まずは小規模なプロジェクトや一部工程の管理など、経験を積める機会を着実にこなすことで、実務力と信頼を育てていくことができるでしょう。
5.プロジェクトマネージャ試験合格のための参考書の選び方や勉強方法
最後に、プロジェクトマネージャ試験の合格を目指すうえで役立つ参考書の選び方と、効果的な勉強方法についてご紹介します。自分に合った学習スタイルを見つけ、着実に合格へと近づいていきましょう。
過去問に挑戦して自分の理解度を把握
まずは、公式サイトに掲載されている過去問に一度取り組んでみることをおすすめします。出題傾向や難易度、時間配分の感覚をつかむことで、自分の理解度や現在の実力を客観的に把握することができます。
そのうえで、どの分野に強みがあり、どこに課題があるのかを確認できれば、今後の学習計画をより効果的に立てることができます。理解度の把握という現状分析を起点にすることで、学習の優先順位も明確になります。
また、情報処理技術者試験そのものが初めての方や、ITの基礎知識に不安がある方は、ITパスポートや基本情報技術者試験などの基礎的な試験から段階的に取り組むのも一つの方法です。知識の土台を固めたうえで挑戦することで、プロジェクトマネージャ試験の学習もスムーズに進めやすくなるでしょう。
自分と相性の良い参考書を選んで反復
自分の学習スタイルや理解度に合った参考書を選ぶことは、学習効率を高めるうえで非常に重要です。図や文章の構成、解説の深さなどを実際に確認しながら、自分にとって読みやすく理解しやすいものを選びましょう。
同時に選んだ一冊だけに頼るのではなく、足りない部分は他の書籍を活用して補っていく姿勢も大切です。また、相性の良い著者が見つかった場合は、その著者が執筆した書籍を中心に揃えることで、内容の一貫性や理解の深まりが期待できます。
勉強方法で悩んだら、参考書を「反復して覚えること」と「理解して考えること」を切り分けながら進めることを重視しましょう。丸暗記をするのではなく、知識の背景やつながりを意識して読み込むことで、実践にも活かせる学習ができるようになります。
選択式問題と記述式の両方に対策していく
午前試験に出題される選択式問題は、過去問からの出題傾向が強いため、繰り返し演習することが最も効果的です。設問のパターンに慣れ、確実に得点できるように仕上げておきましょう。
一方、午後Ⅰの記述式問題や午後Ⅱの論文試験では、思考力や論理的な文章構成力が求められます。参考書で設問ごとのポイントを学びつつ、実際に書く練習を重ねることが重要です。
特に午後Ⅱの論文対策では、第三者に添削してもらうことで、自分では気づきにくい弱点や改善点が明確になります。客観的な視点を取り入れることで、論述力をより実践的に高めていくことができるでしょう。なお、この論文試験はパソコンによる入力ではなく、手書きでの筆記形式で実施されるため、制限時間内に構成から執筆までをやり切る練習も欠かせません。
大切なのは、まず午前試験を確実に基準点以上で通過すること、午後Ⅰに不安やストレスを感じず取り組める状態を作ること、そして午後Ⅱに万全の準備で臨めるように整えておくことです。試験全体の流れを意識し、各ステップで自信を持って臨めるような対策を心がけましょう。
6.まとめ
本記事では、プロジェクトマネージャ試験の概要から詳細情報、取得によるメリット・デメリット、さらには具体的な勉強方法に至るまで、幅広く解説してきました。
プロジェクトマネージャ試験は、合格率が低く、論文試験という大きな壁が立ちはだかる難易度の高い国家資格です。しかし、その困難を乗り越えて合格すれば、プロジェクトマネジメント能力を客観的に証明でき、キャリアアップや市場価値の向上にもつながります。
実務経験の有無にかかわらず、合格に向けた学習そのものがキャリア形成において大きな財産となるのは間違いありませんので、前向きな気持ちで勉強に取り組み、自信を持って試験に臨んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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